ピッチングで速く安定した球を投げるためのステップとテイクバック

前回の記事では、ピッチングフォームにおける足の上げ方について解説しました。 速く安定した球を投げるための足の上げ方とは?ピッチングで速く安定した球を投げるための足の上げ方とは? この記事では、全ての野球プレーヤー、特にピッチャーやこれからピッチャーを始める人と指導者の方のために、足を上げた後のステップとテイクバックについて解説します。

まーく

ちなみに、この記事は、野球歴25年以上の野球マニアである、私まーくが書きました。みなさまのお役に立てれば嬉しいです。

スムーズな体重移動のためのステップは?

理想的な体重移動の流れとは?

まず、ピッチング動作の基本ですが、軸足を安定させて真っ直ぐに立ち(軸足の母指球に体重を乗せる)、そこからバッター方向に体重移動が始まります。この時の流れは下記です。

  • STEP1
    体重移動開始
    軸足の母指球に体重を乗せ、軸足の膝を曲げながら、打者方向に体重移動を始める。ステップする前足の足先を斜め後方に投げ出すようにして、膝を伸ばす。
  • STEP2
    体重をさらに続ける
    リリースの時と同じ角度まで膝を曲げ、打者方向への体重移動をさらに続ける。軸足の内側に力を抜かず、溜め込んだパワーを逃さないようにする。
  • STEP3
    前足をホーム方向に踏み出し始める
    十分なテイクバックをしつつ、前足をホーム方向に踏み出し始める。
  • STEP4
    前足の母指球から着地
    ホーム方向に踏み出した前足を母指球から着地させる。この時、両内モモにしっかりと力を入れ、パワーが逃げないようにする。
活字だけだとわかりづらいと思いますので、下記のダルビッシュ投手の動画のステップを理想的なステップとして参考にしてみてください。ピッチングの一連の動画ですが、下半身の使い方に着目しましょう。

ピッチングはこのように、前に進む力『並進運動』と体を回転させてボールを投げる『回転運動』の2つの力が合わさってできています。体重移動の一連の動作は、この『並進運動』をもたらすものです。また、ステップした前足の股関節あたりが『回転運動』の軸となりますので、体重移動とその一連の動作が正しくできているかどうかが非常に重要です。

骨盤(腰)を開かない

骨盤をホーム方向に向かせない(=体を開かない)ことが重要です。開くとそこで力が分散してしまいますし、腕の出所も体から離れてしまうのです。これは、足を上げた時に膝が折れていたり、前足の着地が母指球からではない場合に起きやすいので注意しましょう。
速く安定した球を投げるための足の上げ方とは?ピッチングで速く安定した球を投げるための足の上げ方とは?

大きくステップする

骨盤の移動の距離がエネルギーの大きさにつながるので、内ももの力が抜けない範囲で足を前に大きくステップしましょう。この時、上半身がホーム方向に倒れないように、注意しましょう。下半身だけ先に進み、上半身は残ってためを作るイメージです。

軸足は安定させよう

左足を勢いよく上げすぎたりして、足の向きがずれてしまうなど、軸足が安定しないことがありますが、軸足の足の向きは必ず、プレートに対して平行にしておきましょう。 速く安定した球を投げるためのワインドアップとプレートの使い方とは?ピッチングで速く安定した球を投げるためのワインドアップとプレートの使い方とは?

腰を少しひねってからステップを始める

足を上げてからステップに移る際に、少し腰をホームと反対方向に捻って、前足を後方に弾くようにしてからステップすると、捻りによって力が生み出され、腰の回転も十分に使えるようになるので良いです。

軸足の曲げる角度を決める

ステップを開始するときは、軸足を曲げる作業が必要です。これがないと、左足を踏み出す力が不足したり、その後の回転運動に上手く力が伝わらなかったりしてしまいます。人によって曲げる角度は異なるので、ピッチング練習で投げやすい角度を見つけましょう。


こちらの動画はJBS武蔵さんの動画ですが、体重移動の解説と、練習方法も載っているのでぜひ参考にしてみてください。

テイクバックとは?トップって?

体重移動と同時に行われるのがこのテイクバックです。テイクバックは投げ始める準備のために手を後ろに引く動作で、これによって、投げ始めのポジションである『トップ』が作られます。今度はこちらの則本投手の動画を、腕の動きに着目して見てみてください。


足をステップすると同時に、腕が弓を射るように引かれているのがわかると思います。簡単にいうとこれがテイクバックの動作です。投げる側の腕は投げ始めのポジションまで後ろに引かれ、グローブの方の腕はホーム方向に向けます。ホーム方向といっても、グローブはまっすぐホームの方に向くのではなく、前側の肩の三角筋の後部あたりがホームを向くくらいの角度が理想なので、腕自体は少し斜めになっています。肩越しにホームを見るイメージです。
テイクバックの動作は、則本選手は比較的、腕の軌道が大きいですが、例えば大谷選手などは小さめで、コンパクトにトップを作るタイプです。どちらが良い悪いではなく、最も『トップ』が作りやすいテイクバックであればどちらでも問題ありません。

理想的なトップの位置とは?

理想的なトップの位置とは後頭部で両手を組み、肩甲骨を後ろに引き寄せた時の位置です。(ぜひご自分でやってみてください)
この『トップ』を正しく作ることが重要で、この『トップ』の位置から腕が、腰の回転、肩の回転によってしなった状態で振られ、ボールを投げるという動作になるのです。この『トップ』の位置が正しくないと、しっかりと腕のしなりを生み出せなかったり、肩や肘に大きな負担をかけてしまうことになります。理想的な『トップ』を作る練習方法に関してはこちらを参考にしてください。
投げるたびにトップの位置が安定せず、フォームがバラバラになってしまう時は?ピッチングで投げるたびにトップの位置が安定せず、フォームがバラバラになってしまう原因と練習方法は? その他、注意すべき点は下記です。

腕を完全に伸ばしきらない

腕を伸ばしきってしまうと力が抜けてしまい、その後の体の回転、リリースに向けて力が伝わりません。両腕とも軽く曲がった状態でテイクバックしましょう(先ほどの動画でも、腕は伸びきっていませんので確認してみてください)。

投げる側の腕の肩を下げない

昔のプロ野球選手の動画などで、極端に投げる側の肩を下げる投法の人がいますが、これは無駄な動きです。感覚的には力が蓄えられている感じがしますが、実は、体が上下する動きに力が使われてしまうので、逆にパワーロスになります。また、体の軸もブレてしまいますので、メリットがありません。あくまでも並進運動(前に進む動き)と回転運動(体が回転する動き)でボールを投げるという点を意識しましょう。

以上が、速く安定した球を投げるためのステップとテイクバックでした。ぜひ参考にしてみてくださいね。みなさまの野球人生がより良いものになりますように。